藤井風を語る真夜中

風という病に侵され…語らせたまえと願った。

“Free“Live2021④(完)

10. 『青春病』

ここはドローン撮影の見せ場。自分的に大好きな曲でもあるので、風っちのアップを見たかったという本音もある(特に、切れど切れど〜野ざらし辺りの表情が見たかった!)が、ダチオ監督の描き方も素晴らしかった。

ピアノの周りをゆっくりゆっくり旋回し、一気に上昇してゆくドローン。スタンドのすべてを映しながら…本当なら、この座席ひとつひとつに“青春”が輝いていたはずだ。マリノスの応援を始めスポーツや音楽のイベントに、大勢の若者が集まって青春を燃やしていたはず。昨年、今年とあらゆることが許されず、今もまた無観客のLIVEをやっている、この現実。

もちろん老若男女すべてが我慢をし、息苦しさに耐えている。が、特に若者の苦しさを知ってほしいと思う。イベントや遊びに行くこと、友達と集うことが青春であるのに、それができない毎日が2年続いている。大学に入った者も授業がない、バイトもできない。大人の我慢とは性質が違うことを、どうか理解してほしい。

その中で、もがきにもがいて、自身をこの芝生に投げ出すように、全身をぶつけるようにして、みんなを音楽で励まそうとする青年がいる。世界よ、この真摯な音楽を聴け! スタジアムの上空へと舞い上がり、遠く横浜の街を映し出すドローン。このスタジアムから横浜の空へ、世界の空へ。飛んで行け、藤井風の音楽よ。弟へのエールのような監督の意思を感じる画角。

スタジアムのメインカラー、今日だけは河津ブルーと呼ぼう。赤い座席は太陽、小林SUN。そんな座席に見守られながら、少年の声で歌い出す風っち。雨中のLIVEでこの歌唱力。どこまで伸びしろがあるんだろう。この歌声が、風に乗って遠く遠く…辛い思いをしている誰かの心まで届くようにと願う。

 

11. 『旅路』

考えてみれば、報ステの生出演を見ていない俺は、この曲をオンタイムで聴くのは初めて。生って貴重やな。

「最後の曲かも知れません」と意味不明なことを、お約束で言ってくれる風っち。神のみぞ知るって何なんw。

「人生、ホンマに色々あるけど、起こることすべてに意味があるから、理由があるから、怖がらずに、ビビらずに行きましょうや」

「俺ら兄弟やし、うちら姉妹やし」

「みんなこの宇宙っていう大学の生徒やから」

好きだなーこの言葉。

3月の報ステの弾き語りより、更に力強く安定した歌声。しかも若々しい声。清潔で真っ直ぐな高校生の声かな。風っち、岡山城東高校の合唱部の一員として歌っていたのかも知れない。後輩たちと一緒になって『旅路』の合唱を。

最高の歌唱ばかりだけど、俺の“Free”Live MVPは、この曲。曲自体に泣いた。歌唱力に泣いた。何かちょっと日本語の歌詞も、英語っぽい発音になってきてるみたいだったな。

 

12. 『何なんw』

1時間LIVEの、いよいよラスト曲。「これがホントに最後の曲やで」「ゴスペルみたいな曲」

またもピアノを叩いてイジメ…いや可愛がる風っち。YAMAHAさんに足向けて寝られんな。

これも若い声。高い、明るい。これまでは大人っぽい風っちだったけど、年齢相応になってきた気がする。いやまあ、今日だけかも知れんが。だけど大人風(おとなかぜ)はGQで極めたと思うので、若者風(わかものかぜ)でいいんじゃないかな当分。笑

素晴らしいグルーヴ感で歌い上げ、最後の挨拶では「見てくれて、来てくれて(聴いてくれてかとも思ったが、英語ではcomingと言ってたようなので)、いてくれて、ありがとうございます」と丁寧な言葉が。オンラインで視聴した人を思い、魂をこの場に飛ばした人を思い、心の隣にいて一緒に時を過ごした人を思う。加えて、このLIVEのために全力を尽くして共に闘ったスタッフ全員に「いてくれて、ありがとうございます」と言った気がした。同時に、今生きてそこにいるアナタ、いてくれてありがとう、と。優しい言葉で奏でる、意味の多重録音。自分にピッタリの音が必ず含まれているんだ。

雨はほぼ止んで雨音は消え、ラストシーンは鳥たちの歓声に包まれた。天空からの使いが、風っちを祝福に来ていた。

 

何という奇跡を見せてもらったのだろう。

雨の中ピアノの弾き語り? あり得ない!とすべてがキャンセルになっても不思議ではない状況で、さらりとやり切ってくれた風っち。

最初から最後まで、ファンサービスのかたまり。『きらり』のアフタートークで紹介してくれた(ちょっと恥ずかしいな…ローファイなね、と言ってた)幻のイントロも演奏してくれた。ボツにした曲も大事にしてる風っちが好きだ。

『もうええわ』のラップも『優しさ』のアカペラも、寝ころび配信も。『何なんw』の変顔も。

どこかにファンの突っ込みどころを残してくれる。あまりにも完璧で怖くなるくらいの人なのに、ゆる〜い可愛さを見せて安心させてくれる。何の計算もなく、ありのままで。

ファンサービスの究極は、最高のLIVEを届けること、よい曲を届けること。それは彼の音楽に触れるたび実感する。これ以上ないものを、いつも受け取っている。

それに加えて、みんなを幸せにしたいという思いが本気なので、このLIVEのような奇跡まで俺たちにプレゼントしてくれる。風っちには大変な苦労があるのにさ、こんなハメになってしまう。笑

みんなを“Free”にしたい、自由を実感してほしいという願いが本物だから、今回「雨」というギフトが贈られたのだ。

だってさ、雨中のピアノ弾き語りほど不自由なことってある? ちょっと笑えるくらい、究極の不自由な事態だよ。それなのに。あの1時間、藤井風が不自由そうだな、なんて微塵も感じなかったよね。むしろ自由自在。雨はコントロールできなくても、他のすべてをコントロールしていた。本物の自由人だったよ。

 

どんなに不自由な環境でも、どう自由な自分でいるかは、まさに自分次第。努力して努力して努力した結果が、最強のシンガー、ピアノマンとしての実力となり、雨がどうした?な存在に風っちを高めていた。降らないように降らないように…と祈っていた自分は、藤井風の凄さを何も分かっていなかった。

不自由を与えられた時にこそ、真の実力、人間力が見えてくる。これがホントの自由だよ!と風っちは身をもって示してくれた。

その自由こそ、このLIVEで受け取った最高の宝物だよ。自分次第で、どうにでもできるんだ!というポジティブな確信。

風っちの実力と、チーム風の技術力、精神力。藤井風に一点集中する、愛の力。それに応える風っちの人間性。ひとつも欠けないからこそ、こんな奇跡のLIVEが実現したんだ。

 

幸せな記憶、幸せな余韻。真剣勝負に挑んでくれたチーム風が与えてくれた幸せ。

最後まで静かに燃えながら、若さと激しさと愛を爆発させてくれた風っち。その燃える魂は、我々みんなに届いたよ。本当に本当にありがとう!!

 

これから報ステ待機。毎晩こんなだよ、幸せ過ぎてたまりませんな。

俺たちの藤井風っちに乾杯!!