藤井風を語る真夜中

風という病に侵され…語らせたまえと願った。

私的大航海時代

渡る海はYouTubeという名の大海原。

大航海の果てに何処へ行き着くのやら分からぬまま、俺は漕ぎ出したよ小さな船で。

音楽の知識も無い、今までYouTubeを友にしたことも無く、特に聴き込んだ歌手もいない。

ひたすら「藤井風」という羅針盤だけを頼りに、恐る恐る出帆したのだ。

 

最初にたどり着いたのは何という港だったか?

多分、洋楽のcoverだった気がする。今となっては、順番にメモしておくんだった…と思えども後の祭り。

 

ビリー・ジョエルエルトン・ジョンだったかな。

あまりにも理想的な18歳くらいの美少年(風氏の場合、美少年というよりは美青年という感じだが、18歳の頃だけは、少年と青年の間だった気がする)が、あまりにも清らかな音を奏でながら歌い、あまりにも自然な英語を発していた。

えと、俺って今奇跡を目撃してんの?コレは少女漫画の実写化?映画のワンシーンなの?

 

一番最初に思ったのは「破壊的パワーな笑顔やな」だった。演奏なんかしなくても惚れるわ。なのに最高な演奏するんやで?

こんなんが同級生だったら、嫌われるまで抱きつく自信があるわ、どうしよう。

 

『Honesty』『Your Song』こんな選曲するの?父上の影響か。古い曲に新しい魅力をふわりと纏わせて、伸び伸びと披露する不思議な少年

 

何かの間違いで日本に降りて来た天使やろ?

日本人に見えないもん…かと思いきや正反対…動画や写真によって別人かよと思うほど顔が変わる。ナニコレ。ホントにナニコレっ!!何度叫んだことか。

 

MVだってそうだよ。作品ごとに別人じゃね?5人くらい藤井風がいるよね?…と混乱は続いている。

歌い手になってなくても俳優にはなったでしょ、アナタ?もう謎が深まり過ぎて頭かかえる。

 

女性の曲も、風が歌うとより魅力的になる気がしてならない。

椎名林檎テイラー・スウィフトエイミー・ワインハウスとの相性は抜群。

椎名林檎の曲の美しさを、改めて教えてくれたのは藤井風だ。詞のパワーに幻惑されるけれども、実に美しいメロディに支えられた楽曲の数々。

テイラーの曲も風が歌うと、より詞の世界が鮮やかになり、心情の切なさが増す。『Wildest Dreams』は本家以上に好きだ。次のcoverが出るならぜひ収録してほしい。

女装シリーズの双璧、エイミーの『Rehab』と『矢島美容室 (通称 ネバダ)』は最高!

Mステで矢島美容室を見て衝撃を受けたという風少年。安室奈美恵と勘違いしたって…「美」と「室」でね、うんうん。はあ可愛い!

動画用にセレクトした部分も完璧だし、「だからミカタ」と歌う時の溢れるパワーは本家には無いもの。本家はアッサリめに歌っているのに、風は「ミカタ!」とめちゃくちゃ強い。笑顔も強い。

ああもう、最高なんだよ何やっても!!

 

あれもこれも好き過ぎるcoverばかりなんだが、ベストスリーを選ぶ…なんて無理だけど!無理やりやってみるさ、ああ!(キレるな)

⚫︎演奏のみ=『宝島』(吹奏楽アレンジ)

⚫︎邦楽=『come again』(m-flo

⚫︎洋楽=『Englishman in New York』(Sting

 

3作品とも、まぁ呆れ果てましたさ、いい意味で。素晴らし過ぎて泣き笑いだよホントに。

いや、ホンの一例としか言えない。これ好き、あれ好きで毎日が過ぎて行く。

演奏のみなら、キリンジの『エイリアンズ』も世界観へのリスペクトが見事。ピアノなのにギターが鳴くんだぜ!(感涙)

高校受験期の『U.F.O〜あの夏へ』も圧巻。鬼気迫るほどの演奏。入試でこれを目撃された先生方…諸々お察しいたしますデス。

邦楽なら『Rain』(大江千里作)も沁みる。等身大の風を感じられる一曲。

洋楽coverはHEHCの全てが素晴らしいけれど、それでも、決して高音質ではない過去動画にも惹かれてやまないのは、そこに風の息遣いがあるからだよな。

12歳の、15歳の、18歳、20歳の…その時々で真面目だった風。音楽と真正面から向き合っていた風。いつだって真剣だった、音楽の前で謙虚な美しい顔をしていた。

後追いでも、それを見られる喜び。YouTubeの中にある音の出る写真集。どうか永久に残ってくれと祈る。

 

いやぁ、改めて、YouTubeの未来を理解されていた父上が凄い!ホントにもう、里庄町に足向けて寝らんない!!

 

藤井風のcoverの、何が一番の魅力なのか。

色んな視点があると思うけれど、ど素人の自分が感じるのは、曲の濃縮化・明確化じゃないかな。

その曲はどういう曲なのか、を端的に示してくれる。

吹奏楽曲として有名な『宝島』は、演奏者や指揮者のレベルによって変化する曲だけれど、ピアノだけで演奏された風の『宝島』は、そうそう!(吹奏楽の)宝島のグルーヴはコレだよな!と思わせてくれるのだ。

圧倒的な楽しさ。豊かな広がり。宝島という言葉の持つイメージを余す所なく感じさせ、海風を全身に浴びる快感まで与えてくれる。「これこれ!」感が半端ない。

ああ、今の風で再録してほしいなー!永遠に聴いていたい。なんなら自分の葬式で流してほしい。

 

わずか3分から5分の動画に、自身の好きな曲をより引き立てるアレンジをし、絶対に飽きさせない。オチまで工夫して、人を楽しませることに全力。それを(中断期はあれど)10年以上も繰り返して。

退屈だと感じる演奏、環境音楽になるような演奏はひとつたりと無い。楽曲のエキスを浴びる我々は「濃いーよ」と思う間もなく、中毒性にやられてしまう。まさに「藤井風に殺られた」。アンタ稀代の連続殺人鬼だよもう!

 

藤井風の枠の無いあたたかさ、大きさ。cover曲達もその懐に包まれて、複雑な見かけの構造(それももちろん素晴らしい)を取り払われ、ピアノによる再構築で、より鮮明にその本質を見せてくれる。

これはこういう曲なんやで!と風が教えてくれる。えかろう、と優しく笑いながら。

こんな美しいメロディだったのか、と目を見張る。こんな音楽だったのか、と耳に胸に届く。

ありがたいなぁ、いい曲をいっぱい教えてくれて。ありがとう。と素直に思うのだ。

知らない曲の方が多くて、昔の曲の良さに撃たれて。

 

“きらりからの風”というスタートになった俺だけれども、知ってみたら、むしろHEHNの曲達にドハマリ。MVでは『へでもねーよ』最高!みたいな自分がいる。

もちろん『きらり』も大好きで、要するにどの曲も信じられないくらい全部好き!なんだけれど、風の曲について、「大衆受けする方向に持って来た」みたいに言う声がある。

独自性、クセの強かった『何なんw』などに比べて、一般向けに寄った『きらり』、みたいな。

 

ちゃうねん、ちゃうねん!

昔から風の中には「世界で愛されてきた音楽」のストックが山のようにあんねん。全部が血肉になってるねん。

あれもこれも全部わかってんねん、風は。

誰に受けるとか関係なく、その時作りたい曲を生み出してるのが藤井風なんよ。

作為じゃない、ありのまま。

風を自分のように考えたらアカンでぇ。自分の頭では風は掴めへんで。だって風やからな。

と、どこの方言かわからん言葉が出てくる俺なのだ。

 

 

うむ、今日も果てしなく長い。無駄に長い。

読み始めてしまったアナタ、ホントにごめんね。

 

風の動画から兄上とのコラボチャンネルにも寄港し、そこからの数多の寄港地にも…どこまで広がるこの世界。

チャリティCDで伴奏してる音源まで聴いた時には、風沼の深さにおののいたよ…。どこまで運ばれていくん俺?

 

魂の大航海時代は、まだまだ続く…みたいだ。